Statement
エロス=インスタレーション=漫画
人間の根源を最も豊かに表現する
1.人間であることを愉しむということ
私が人間として生まれ、死ぬにあたって、生きているうちに常に念頭に置いておきたい信条があるとするのであれば
「人間であること」を受け容れ、それを愉しむことに全うする、ということである。
ここで一度、「人間であること」とは何かを考えたい。
私は考える。人間らしさとは、事象から意味を見出す「象徴」を生む知能であることと、己の欲望と理性、暴力と倫理のはざまで揺れる心であることなのではないかと。
人間がこの時生み出す「歪み」「醜さ」「矛盾」「ズレ」「弱さ」といった、理性的論理で説明がつかない事柄が、私にとっては愛おしいもののように思える。
2.劇場としてのエロス
私は上記の「人の不条理」を露呈させる劇場として、「エロス」というモチーフに、私は心強く惹かれている。
エロスは人間からいとも簡単に理性を引き剥がし、我々に「人間とはいかに不条理な存在か」を披露する。
私が愛おしいと感じるものはエロスを見ることで得ることができる。
だから私はエロスというモチーフを積極的に選択し、その中に見える人間そのものを描こうとする。
3.インスタレーションとしてのエロス
私が描くエロスとは欲望の原理ではなく、エロスが発生する瞬間と、それを取り巻く環境である。
エロスはいつ発生するのか。それは、「空間」が発生した時である。
他者を欲するということは、自己と他者を統合したいと願うことである。
これを俯瞰すると、自己と他者に「間」が空いていることに気づく。人はこの空間―不在の間自体を「関係性」と呼ぶ。
この関係性は、二者間の関係によって様々な名前がつく。それは固定されたものではなく、関係の呼称は常に移り変わる。性差、主従、政治…なんであれ、そうだ。
私はこの空間性を「インスタレーション・エロス」と呼ぶ。エロスとは、人間が生み出す象徴の空間彫刻である。
4.インスタレーションとしての漫画
この「インスタレーション・エロス」を最も豊かに表現できるメディウムとして、私は漫画を選択した。漫画もまた、インスタレーションであるからだ。
漫画も、絵と絵、事象と事象、キャラクターとキャラクター、ページとページ…様々な要素の連続で成される媒体であり、その連続の「間」に、我々は無限の想像をはたらかせる。
これもいわば観念的空間彫刻と言っても過言ではないだろう。漫画が総合芸術たるゆえんは、これらが多分に含まれた複雑かつ立体的な関係性によるものだ。
5.エロス=インスタレーション=漫画という方程式
以上より、エロスと漫画はインスタレーションであるという点で親和性が高い。
エロスという舞台を見せるレンズは漫画がふさわしいと私は考えている。
ゆえに私は、人間の不完全性・複雑性を、エロスという舞台で、漫画で表現しようとするのである。
Profile
おわりにんげん(Owari-ningen)/馳川 敬(Hasegawa kee)
1994年 栃木県生まれ
2019年 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻 卒業
2024年 ワニマガジン社 『COMIC失楽天』にて成人向け商業漫画家としてデビュー
2025年 コアマガジン社より 初単行本『ガール・パセス・ボーイ』刊行
現在東京を拠点に活動中
Career
2025
12/01 参人間堂 より『『ガール・パセス・ボーイ』を解体する。』発行
09/26 コアマガジン社より 初単行本『ガール・パセス・ボーイ』発行
09/02 『ホットミルク』2025年10月号 短編漫画『雨がにおえば』掲載
08/01 『ホットミルク』2025年9月号 短編漫画『あなただけみつめてる』掲載
06/02 『ホットミルク』2025年7月号 短編漫画『Have a nice day.』掲載
03/24 『失楽天』2025年4月号 短編漫画「椿の秘めごと」掲載
01/31 『ホットミルク』2025年3月号 短編漫画『パス・ミー・バイ』掲載2024
2024
11/24 『失楽天』2024年12月号 短編漫画『紫陽花は赤く咲く』掲載
11/01 『ホットミルク』2024年12月号 短編漫画『スモーク・イン・ザ・フレーム』掲載
08/24 『失楽天』20249月号 短編漫画『悪い子になりたくて』掲載 ※デビュー作
06月 太田エロティック・マンガ賞2024 奨励賞受賞
2023
Vコミ 『生徒会長と××した話』連載 (全11話) ※小津やな名義
